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「結局大事なのは”バイブス”と”グルーヴ”」。論より証拠で語るティール組織 後編|ケイソウシャのコンテンツNO.1

2023.12.18

  • ティール組織
  • マネジメント
  • リーダーシップ
  • 組織論

前編はこちらから

どんなに素晴らしい理論でも、机を飛び降りて現場と対話することが何よりも大事である。

前回に引き続き「世の中で語られているティール組織って、現場に照らし合わせてみると実際どうなの?」というテーマの基、経営のための創造社(以下:ケイソウシャ)メンバーによる対談記事をお送りする。

対談メンバー

ふたむら康太

1978年生まれ。愛知県出身。2002年 株式会社サイバーエージェントに入社。自社メディア部門に勤務し、構築と運用に携わることで収益化の難しさを知る。退社後に独立。大手から中小企業まで様々なブランディングやマーケティング業務を10年間務め、デザインのみならず営業・経営といった網羅的なスキルを身につけていく。2『経営のための創造社』を設立後は、企業のマーケティングやブランド戦略構築・運用のインハウス化を支援。更には戦略に基づいた施策設計と実行に必要なパートナー選定を担い、いわば企業のCCO代理としてチーム編成や監督までをも行う。

いそっち

事業戦略策定、戦略に基づく戦術(マーケティング、コンセプト、コンテンツ)の企画を生業としている。 以前はアドテク業界でトレーダー、HR業界でアナリストを務める。座右の銘は「1%くらいが好きになってくれれば良い」。好きな食べ物TOP3はいちご大福、柿の種チョコ、サーティーワンのポッピングシャワー。Twitterアカウント「ふたむら、曰く@observefutamura(https://twitter.com/observefutamura)」の運用者。お仕事のご相談はお気軽にDMまで!

野々大樹(ファシリテーター)

大学で海洋生物学を専攻、シジミについて学ぶ。東京、徳島、福岡で営業や地方創生、マーケティングの仕事を転々とする。現在はデジタルマーケティングが本業。

僕はグリーンっぽい考えで、ふたむらさんがティールっぽい考えだから上手くいってるのかな

いそっち メンバー全員がリーダーになろうとするくらい強い意志を持っていたらティールってまだ実現可能だと思うんですよ。責任を持っているっていうか「そもそもデフォルトで責任感が強い」みたいな。ひとりひとりが責任を取ろうとして、各プロジェクトを自分で立候補して先導するのであれば「個人の責任です」ってなるのは理解できます。でもそれが限界かなと。

ティール組織がどこまで細分化しているのかはわからないんですけど、そういった責任感の強い人が担当しているプロジェクトに紐づくメンバーさんも自由に物品買っても良いって話ですもんね?秩序っていうものがあるからこそ尊重し合える部分ってあると思います。カオスになっちゃうとそれって難しいんじゃないかなと。僕がリーダーをやっていて、メンバーが「購入した物品を自己負担します」って言ってきても「え?!そんな、いいよ!俺が払うよ!」ってなるし笑 しかもその物品が必要なものかどうかまで思慮深くないと、その責任って無責任じゃないですか。この必要/不必要の線引きって、方針を定めている人がいてそこに準じることによって行うことができると思うんですよね。

ふたむら うんうん。

いそっち 「あのリーダーだったら、こういうジャンルの物品を買うのに1万円払っても納得してくれそう」って肌感を持てるのは相当なディスカッションの果てにあると思うんです。契約書に書かれていなくても判断・決断ができるくらいの双方の歩み寄りがあるから、ティールっぽい責任を人に依存させることができる。だからまず時間がものすごく必要だなと。

ふたむら そうだね。

いそっち そこまで時間をかけて意志を持てる大前提は、例えば僕だったら「ふたむらさんがやっている事業だから」っていうのが本質にあるんですよ。なにをするにも軸になる人がいるからこそだと思うんですよね。このティールっていうのは、その軸になる人・モノをもっと広い概念で考えないと不可能かなと。それが”社会貢献”なのか何なのかはわからないですけど。ティールの説明だけ聞くと「誰かを神輿に担いで何かをすること」はダメだって言われているような気がして。

ふたむら 『街が荒れ狂ってて、「このままじゃマズイからなんとかしようぜ」って言い出すやつがいて、でもその言い出しっぺは戦略が考えられないってなった時に「あ、じゃあ俺が戦略考えるよ」ってなるやつが出てくる。』みたいな共創の成り立ちだったらできそうだなと思って、俺も最近そんな感覚になってるよ。能力的にできる・できないってこともあるから、自分がこの役割を担った方が効率が良いなって思うことはある。その役割として資金調達とかを担っているから責任者っぽくなっているだけで。ティールの在り方としてはそういう感じの方が合ってるよね。

いそっち そうですね。いま話を聞いていて思ったのは「組織論の掛け合わせだな」と。僕はグリーンっぽい考えで、ふたむらさんがティールっぽい考えだから上手くいってるのかなと思いました。業務委託者である僕たちは勝手にふたむらさんを上司っぽく思っているけど、ふたむらさんはそんなこと思ってないから”安心する”っていう。それが尊重に繋がっているから一緒にやりたいと思えるんじゃないかなと。こちらからティールっぽくするのは難しいです。自分がサラリーマンだったとして「よし、じゃああの上司といっちょ補い合ってみっか!」なんて考えないですもん(笑)

ふたむら あはは!(笑) 言いにくいのかな?そもそもなんで「補い合おう」ってならないんだろうね?

いそっち 部下からしても上司からしても「一緒に事業を作る」っていうフラットな見方ができないからだと思います。大学生と一緒に事業をやろうとしていたくらいフラットな思考を持つふたむらさんだから垂直関係を度外視できるけど、これまでの組織形態で生きてきた人がそこに急に順応しようとすると無理だろうなって思います。急に「ティールっぽくやってよ」って言われても困るはずです。

ふたむら 「どうやってやったら良いの?」ってなるもんね。

いそっち 「あれ、ということは敬語とか使わなくても良いのかな?」とか、そういう極端な考えになる可能性があるかなと。

ふたむら あー、確かに。

いそっち なので、グリーンとティールが混ざったまた違う組織形態ができるものなのだと思いますけどね。

飼い主はいるけど「放牧させてもらってます、自由です」みたいな感覚に近いかもしれない

ー 私の意見だと、ってあれ、これ私が口挟んでも良いですか?

ふたむら どうぞどうぞ。もちろん。

ー 私たち(業務委託者)側がティールだと思っているとしっちゃかめっちゃかになりそうというか。笑

いそっち そうそうそうそう!(笑)

ー 何ていうんですかね。「放牧させてもらってます!」みたいな(笑)

ふたむら いそっち あー!(納得)

ー 飼い主はいるけど「放牧させてもらってます、自由です」みたいな感覚に近いかもしれないですね。

いそっち そうですね。(放牧されると)困っちゃうし、それで焦らないのもヤバイっていうか。「放牧状態でも良いよ!」ってふたむらさんが良しとしているかどうかは、自分の中ではあまり関係ないじゃないですか。自分がやるかどうかっていうのは。その価値観こそが「責任」なのだとしたらティールっぽいのかもしれないですけど。笑 みんなで議論をして取り決めをするっていう回数が多すぎても秩序が乱れるっていうか。

ー (笑)

ふたむら 俺はティールにしたいと思ってやっている訳じゃなくて、どちらかというと「死ぬまで何かしら仕事を全うするなら楽しい方が良い」と思っているだけ。あと、自分が命令されるのが嫌いだから人にもしないって感じ。命令じゃなくて促しはするけどね。それでピンと来ない人は多分そういう形式のチームには向いてないだろうし、辞めていくだろうし。「あ、ここにいれなくなるの嫌だな」って思わせる空気作りが必要なのかなと。”自由なのにそこにいる”ってことは、何かしら居心地が良かったりメリットを感じてるって訳だから。お互いに思いやりや信頼が勝手に醸成されていくようにしないとできないだろうなと。

いそっち その上でも全体を統括する人がいてくれないと不安になっちゃうというか。責任を持つことはするけど「親はいてほしい」って僕は思います。親がいるから安心して生きられるので。自分が代表になって自分よりも上がいなくても外部のアドバイザーにはいてもらいたいし、その気持ちがあるから下にいる人達にも安心させてあげたくなる。もしそういう関係性がなくなってしまった時に、絆ってどうやって生まれるのかな?っていうのが気になりますね。完全フラットな組織形態で自由だったとしても、僕は安心できそうにないです。親にサイコロ振ってもらいたいし、自分が親になる番が回ってきたら頑張るし。

ふたむら その話聞いたら、学校っぽいのかなと思った。部活もそうだけど、「この大会で勝つぞ」って目標ができた時に役割ができる。率先するやつもいれば、作業するメンバーも出てくる。で、そもそもの目標を作ったのが先生な訳だけど、先生も生徒から学ぶことってたくさんあると思うんだよね。いそっちが今言ったように、俺も一人でやるとしてもアドバイザーや仲間がいてくれた方が良い派。だけど、どちらかと言うと目上よりも自分の知らないことを教えてくれる次世代の意見の方が安心する。

いそっち それがふたむらさんにとっての敬いなんですもんね。

ふたむら そうそうそう。

遠慮とか敬意とかは一瞬たりとも忘れちゃいけないんだろうな

いそっち 「年齢もキャリアの長短も気にせずに敬い合える組織」がティールなのかな。それが生命体なのだと定義しているのかもしれないですね。

ふたむら あー、そうかもしれないね。

いそっち でもティールは、これはこれで特有のいじめとか起きそうですけどね。

ふたむら 起きるよね。絶対起きるよ。

いそっち 完全フラットな水平組織の中でハブられちゃったらどうしようもない。

ー 村八分みたいな感じですよね。

ふたむら DAOが難しいと思っているのはそこ。不特定多数の人が一気に入ってくると価値観もそれぞれだから統制が取れなくなる。マネジメントをする人もいないし。でもウチ(株式会社ラム)はすごい慎重に入ってもらう人を選んでる。こういうのをじっくりと積み重ねていかないと絶対いじめみたいのは起きるだろうね。

いそっち 確かにそうですね。あとはもう、こんなこと言うと元も子もないですけど「組織論で考えるから良くない」とも思います。友達関係とかもそうですけど、勝手に出来ません?組織って。

ふたむら なりゆきで、ってことだよね。

いそっち おっしゃる通りです。ある人は自分にとって兄貴分、ある人は弟分、ある人は先生っぽくて、ある人は遠い鳩子(はとこ)のよう みたいな。そういうのは自然的に発生するものだと思うんですけど、組織論から入っちゃった時にこの自然発生的な構図を作るのは不可能だと思うんですよ。自然発生した関係を基に組織を作るのが流れとしては良い。トップダウンが当たり前だった時代感とティールは全く異なっているけれど、いずれにせよセオリーに伴って価値観が作られていったに過ぎないと思います。後輩にめちゃくちゃ心の中で感謝をしているし尊敬もしているけれど、それを直接言えないセオリーだったから直接言わなかっただけ。

ふたむら うんうん。

いそっち 「上司部下っていう関係性が生じていない段階で互いが出会っていたらどうなっていたんだろう?」ってイメージすることが大事というか。僕とふたむらさんが会社で出会って上司部下の関係だったら、それは組織という形から入っていることになる。でも、趣味のオフ会の場でたまたま隣に座ったのがふたむらさんだったらその上司部下の関係からは絶対スタートしないじゃないですか。そういう考えをみんな持っていくことでティールっぽくなっていくっていうか。それが全てである気がします。ふたむらさんと僕との出会いが組織的ではなかったから、僕は今でもオフ会にいるような気分でいれる訳です。心なんですよ。

ふたむら そうだね、確かに。心の問題っていうのは結構大きいよね。今一緒にやっているメンバーの得意不得意は知っているつもりだし、常に対話して「ここ得意そうだからお願いします」って依頼するしてる。でも、誰も得意じゃない領域に無理やり誰かをアサインしようとは思わない。パーツとしては絶対に考えないし。例えばキャッシュが結構ヤバイことになって「いま赤字で会社なくなっちゃいそうです」って危機感を煽っても、みんなにとっては危機じゃない。でも”いつも遊んでいた公園がなくなっちゃう”って感覚で会社を捉えているのであれば「あそこを無くさないためにみんなで寄付しようぜ」って自主的に思ってほしい。「ちょっと手助けできるかもな」くらいの気持ちが主体性に繋がるのかなって思うかな。

いそっち 「自分ができる範囲で手助けしてあげたら相手が喜びそう」みたいな。歩み寄りですよね。

ふたむら うん。そんなんで良いよ。「俺でも役不足かもしれないけど、まぁこの中だったら俺だろうな」みたいな。「いないからやるしかないっすよね」みたいな。そういうのは助かるし、みんながそういう気持ちでやってくれたら安心感が強いかな。それが嫌な人もいるから、そういう人は合わないだろうね。

遠慮とか敬意とかは一瞬たりとも忘れちゃいけないんだろうなって。気を抜いて無愛想な態度を取っちゃったとしたら、相手は「自分のせいであの人を怒らせてしまったのかもしれない」って思って一日中嫌な気持ちで過ごさないといけなくなるじゃん。だからそうはさせないようになるべく心がけて人と対面しようって全員に思ってほしい。それが願いだね。

”監督はヘボいけどキャプテンは優秀”みたいな。笑

ふたむら 100人いたらその100人に対して、創業者とか、主として事業をやっている人が話しかけに行って、悩みとか望みとか聞いたりするのを全部やるしかないと思う。本当に既存の組織から変えようと思ったら、個別最適してあげないと。信頼も集まらない。それをやるのはマストだと思う。そこをサボったら絶対無理だろうなって感じがする。

いそっち トップがそれをやらないとダメですよね。

ふたむら 俺はそう思う。

いそっち 人によってトップが変わるというか。社長は組織的なトップだけど、自分の心的なトップは必ずしも社長って訳じゃないですもんね。「オフ会で隣になって〜」っていうのを連続で100人でやって、一緒に時間を過ごした上で「この人は自分の心の拠り所になる」っていう人を集めないと多分無理ですもんね。

ふたむら 100人じゃなくて、人数によってはできそうだよね。

いそっち 人数によってはできそうですね。

ふたむら ただ「あるメンバーの心的なトップが社長も取り込む」みたいな感じじゃないと組織的には危機だよね。そのトップがみんなを連れて会社を辞めて行ってしまうかもしれないし。”監督はヘボいけどキャプテンは優秀”みたいな。笑

いそっち ははは!笑 「初代や2代目は上手くいかなかったけど、3代目の会社は上手くいった」みたいなパターンが生まれる理由は、監督とキャプテンが相互で補い合えていたかどうかなのかもしれないですね。

ふたむら 結局最後は社長の気分で方針が決まっちゃうようなみたいな環境だったら、俺は「こんなの全くやる意味ない」って思うだろうな。

いそっち 僕は「自分にその組織が合ってなかったら違うところ行けば良いや〜」っていう相当弱い意志を持った人間なので、自然発生的に生まれる間柄から何かを生み出すっていう方向に思考がいっちゃうかな。対照的に既存組織の中で改革を進めている、例えば政治家のみなさんとかは本当に意志が強いんだろうなと思います。あるものを一回壊して作り直そうとしていますから。すごいと思います。僕と価値観は異なりますけど、既存組織を根底からひっくり返そうとする人達を否定する気持ちは0ですね。その気持ちも尊重したい。

ふたむら なんにせよ急いでやると上手くいかなそうだよね。方法論でティールを考えると尚更上手くいかない。俺の場合は「目的自体がティールを作ること」だから。事業とかは正直どうでも良いんだよね。「こういう世界を作りたい」って掲げる理念がそれだから。

いそっち 早めにふたむらさんの理念を本とかにまとめて出した方が良いかもしれないですよね(笑)

ふたむら でも実績がないから。笑 論だけが先に出ていく。笑

いそっち 「30年前、すでにふたむら康太はこんなことを言っていた!」みたいな。

ー 今の段階からファンを作っていくのが良いかもです。実現するまでの過程を見せていく的な。

ふたむら バンドみたいな?笑

ー そうです。成長させていただく。

ふたむら それいいね。それどうやってやったらいいの?

ー やっぱり、まずはTikTok始めることじゃないですか?(笑)

ふたむら 「お金を集められる目的のためにふたむらを神輿に乗せて担いだ方が合理的だな」って思うなら、使って。笑

企画 野々大樹

1大学で海洋生物学を専攻、シジミについて学ぶ。東京、徳島、福岡で営業や地方創生、マーケティングの仕事を転々とする。現在はデジタルマーケティングが本業。

写真 泡沫コト

7歳の頃から小説を書くことに魅了され、2018年からフリーランスライターとして活動開始。現在はwebライティングをはじめWebサイトや広告などのコピーライティングや、
ゲームやイベント、映像関係などのシナリオ・脚本制作を行なっている。また、小説や詩、エッセイや写真などの表現活動を通して物語やコンセプトの創作にも取り組んでいる。好きなものは珈琲、散歩、温泉、アート、エンタメ全般。これからゲーム配信に挑戦しようとしている。

編集 いそっち

事業戦略策定、戦略に基づく戦術(マーケティング、コンセプト、コンテンツ)の企画を生業としている。 以前はアドテク業界でトレーダー、HR業界でアナリストを務める。座右の銘は「1%くらいが好きになってくれれば良い」。好きな食べ物TOP3はいちご大福、柿の種チョコ、サーティーワンのポッピングシャワー。Twitterアカウント「ふたむら、曰く@observefutamura(https://twitter.com/observefutamura)」の運用者。お仕事のご相談はお気軽にDMまで!

対談実施場所

Studio HEYA(スタジオ・ヘヤ)

東京・西日暮里にあるキッチン併設のハウススタジオ。
朝も夕も自然光が差し込む2階の南西向きに位置しており、木とアイアンとヴィンテージ家具がバランスよく調和する空間です。
ファッションポートレートや商品撮影、キッチンシーンを取り入れたライフスタイルカット、自然光を活かしたレシピカットなど、さまざまなシーンの撮影に適応できます。

スタジオの詳細が知りたい方はこちらから!(https://heya.lamm.tokyo/

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