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インタビュー 前田徹也(株式会社ワークスエンターテイメント)後編|ビジネス工場見学 FILE.2

2023.07.07

本インタビューシリーズは「ビジネス工場見学」をキャッチコピーに、経営者の頭の中を工場に例えて、どのようなプロセスを経て唯一無二のサービス創造に至ったのかを紐解いていきます。経営者の数だけ存在するビジネスの生産現場に潜入していきましょう!

この記事では
「経営者の過去の経験」を原材料の調達、「サービス立ち上げ」を加工・製造、「サービスローンチ」を出荷・提供という名称で表現しています。

前回に引き続き、パーソルキャリア株式会社(旧インテリジェンス)の創業者のお一人であり、現在は『株式会社ワークスエンターテイメント』の代表取締役社長である前田徹也氏の頭の中にある「工場」での経営プロセスや考え方を見学させていただきました。

前編では大学時代や株式会社リクルート時代の経験を通して、前田氏がどのように起業に向かっていったのか、その根源にある出会いや転機をお伝えしました。

ここからいよいよインテリジェンス創業編、さらに前田氏が現在取り組んでいる『株式会社ワークスエンターテイメント』に至った過程を紐解いていきます。そこにあったのは、ひたすら人との繋がりに向き合ってきた前田氏のドラマ溢れる日々でした。

前編はこちらから!

前田徹也(株式会社ワークスエンターテイメント 代表取締役社長)

1963年生まれ。京都府出身。明治学院大学に進学し、プロデュース研究会に所属。後の株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)の創業メンバーの1人である宇野氏と出会う。明治学院大学卒業後、株式会社リクルートに入社。総務部に勤務した後、株式会社シーズスタッフ(現:株式会社リクルートスタッフィング)に転籍。営業として女性事務職の人材派遣サービスに携わり、クレームの対処と人間関係の構築を身に付ける。その最中、創業メンバーである前田氏、宇野氏、島田氏、鎌田氏の4人が集い起業を決心し、退職。1989年に株式会社インテリジェンスを創業。社内の従業員同士のコミュニケーションや相互理解に関して頭を悩ませ、自己理解にも苦しむ中FFS理論と出会う。その後株式会社インテリジェンスを離れ、株式会社ワークスエンターテイメントを設立。FFS理論を活用してストレスマネジメントや人事における従業員の自己理解、他者理解、相互理解をデータから読み取り、組織が成長・改善していくための実践戦略の支援や個人キャリアの支援を行う。それぞれに合った働き方ができる機会を沢山作っていくべく邁進中。

ー 引き続きよろしくお願いします。

前田 よろしくお願いします。

ー 今回はいよいよインテリジェンスの創業メンバー4人との関わりということで、その経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか。

前田 ひょんなことで創業メンバー4人と関わるようになったところからですね。

~続・原材料の調達編~

インテリジェンスの創業メンバー集結

前田 創業メンバーの一人の島田さんって、僕のリクルート時代の同期だったんです。新入社員の時から仲の良い同期が20人くらいいて、東京の同期会の企画をやったりとかパーティやったりとかしてたんですけど、たまたま最初の同期会のイベントを幹部で打ち合わせしようってなった時に、僕と島田さんしか来なかったんですよ(笑)なんで誰も来なかったのか理由は分からないんだけど、島田さんと二人だけだったから飲みに行くことになって。そしたらその時に「実は僕、起業しようと思ってリクルートに来たんだ」って突然言い始めて。「え、マジ?じゃあ面白いやつを紹介するよ」って言って宇野さんの話をしたの。

見学メモ その4
島田さん島田 亨(しまだ とおる)氏。株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)の創業メンバー。USEN-NEXT HOLDINGS取締役副社長COO、トランスコスモスやツクイの社外取締役などを務める。かつて楽天株式会社代表取締役副社長や株式会社楽天野球団代表取締役社長としても活躍した。

ー おお!!ここで創業メンバーの3人がついに顔を合わせるんですね。

前田 そう。それで1週間後に宇野さんと島田さんと会う約束をしたら、宇野さんが後のインテリジェンスの社長で今オープンハウスの社長の鎌田さん。創業メンバーの最後の1人を連れてくるんですよね。

見学メモ その5
鎌田さん鎌田 和彦(かまた かずひこ)氏。株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)の創業メンバー。2022年に株式会社オープンハウス代表取締役社長に就任。その他、社外取締役として複数の企業に参画している。

ー 創業メンバーがついに……。でも今のお話を聞くと前田さんが招集したんですね。鎌田さんを連れてきたのは宇野さんかもしれないですけど、宇野さんと島田さんを引き合わせたのは前田さん。

前田 そうそう。宇野さんからしたらしめしめって思ったかもしれないね。当時島田さんはリクルートの1年目で表彰されるくらいバリバリ営業やってたんです。実は電通を蹴ってリクルートに来てるんですよ。

ー 凄っ!!

前田 その時は起業なんて話は全然出なかったんだけど、その1ヶ月後に事態が一変する。

「起業なんてこんなもんかもしれないね」
その1週間後、4人全員が退職届を出した

前田 皆で初めて飲んだ1ヶ月後に島田さんから招集がかかったんです。島田さんのリクルート時代のお客さんが建設会社で外苑前にちょっと美容院を作るっていう話になって、その美容院のスペースが大きすぎるから、もう半分は新規事業をやりたいってなったそうなんです。そこで島田さんに、なんの新規事業をやったらいいか提案してくれっていうオファーが来て。島田さんが皆を集めて「その企画案を考えよう」って夜とか土日とか集まって、半分打ち合わせの半分飲み会みたいなものを続けるんですよ。

ー なんか、青春ですね。

前田 青春青春。だけどいつまで経っても良いアイデアが出ない。それでどこかのタイミングで4人で飲んでた時に鎌田さんがね「僕たち本当に埒があかないですね。もう埒があかないから、起業しよう」って。そこで言うんだよね。

ー え、いきなり!?

前田 でしょ?当時僕もシーズスタッフでそこそこの営業成績出していたし、、給料もずっと上がってたから「何言ってんのかな」みたいになったんだけど。宇野さんがね「そうだね」って言ったんですよ。「そうだね。そうしよう」って。

ー へえ〜!

前田 ちょっと待ってって思いましたよ。だから宇野さんがお手洗いに行ったタイミングで僕もお手洗いに行って「宇野さんさ、やるんだったら俺もやるけど、本当にやるの?」って聞きました。どんな場所で話してるんだって感じですけど。でもそしたら宇野さんがボソッと言ったんです。「起業なんてこんなもんかもしれないね」って。

僕もそれで「分かった!」ってなって。席に戻ったら鎌田さんが「よし!1週間後に全員退職願い出すぞ!」なんて言ってね。

それで本当に出すんですよ、全員。

ー かっけえええ!!!笑

前田 もう大問題になりましたよ。

半日5万の風船配りから年間1億稼ぐまでの珍道中

ー ドラマみたいです。それでここからインテリジェンス起業編に入っていくんですね。

前田 そうですね。晴れて起業することになる。ところがですね、何をやるって決めないで起業してますから。最初に受注した仕事が、当時ラフォーレ原宿の1階にあったアパレルのお店の風船を膨らませて配るっていう20万円の仕事が最初の仕事です。4人で行って皆で膨らませました(笑)

ー 4人で20万円ですか?!

前田 そうです。

ー 1人5万。

前田 そうですね。半日かかって風船配りまくって1人5万。そこからスタート。

ー はぁ〜面白い。そのラフォーレの仕事は誰が持ってきたんですか?

前田 宇野さんです。元々は、僕がシーズスタッフにいた時にお客さんだった人が持ってきてくれたわけ。でも僕はその会社の事業部長と仲が良くて、その事業部長が連れてきてくれた社長と宇野さんが意気投合したんですよね。その後、いくつかプロモーションの仕事をもらいました。

ー その巡り合わせが凄いですね。全部が全部に繋がってるみたいな。

前田 凄いっていうか無謀でしょ?珍道中ですよ(笑)今じゃ絶対にできないし、もし自分の息子がそんなことするって言ったら絶対に反対する(笑)辞めとけよって。

ー そこからどうやって後のインテリジェンスの方向性に変わっていったんですか?もちろん、お金を稼がなきゃいけないっていうのが目下にあったとは思うんですが。

前田 よく話してたのは、もちろんやりたいこともあるけど、大事なのはやらないといけないこととできることをどうリンクさせるかっていうこと。4人ができることを考えた時に、僕と島田さんに関しては僕が派遣事業で彼は採用広告をやっていて、宇野さんと鎌田さんは不動産業をやっていたので、事業としてやるなら不動産関係か人材関係かっていう話をしました。

その時に、やっぱり不動産関係っていうのは資本がないと大きな商売ができないし、ある程度マネタイズ化するのに時間がかかるっていうことになって。それで採用系で行こうって4人で決めたんですよね。最初は島田さんと僕のお客さんのところを周りながら鎌田さんに企画してもらいました。宇野さんには全部統括して管理系を見てもらって。もちろん、営業も一緒に行っていたんですけど。1年くらい営業して、その年4人で1億くらい稼いだんですよね。

あの頃は、最悪このメンバーだったら宅急便で働いて、もう一回集まろうみたいな腹の括り方を全員がしてたんですよ。

ー 4人の頭の中できっちりフレームワークができていたってことですよね。熱量の出しどころを心得ているというか。サービスの部分はすごく冷静にロジックで考えてる。その後は、採用系一本で進んで行ったんですか?

前田 稼ぐ中で大きな転換点になったのがあったんですけど。それが当時の「スチューデントレポート」っていうのがあって。九州から北海道までの特に国立大学中心で、早慶、上智、関関同立の2000人の学生ネットワークを作って、彼らに集めてもらった就職活動の情報を編集して企業に売る情報誌みたいなものがバカ売れしたんですよ。

当時は就職協定ってのがあったので、就職活動自体がすごいブラインドで行われていたんです。今はインターネットが普及してなんでも見れるようになっちゃったけど、当時はブラックボックスになってて、人材サービス会社の「FRIDAY」「FOCUS」とか言われました(笑)

見学メモ その6
FRIDAY講談社が発行している写真週刊誌。創刊以来数々のスクープを世に送り出してきたことで知られており、有名人がFRIDAYにより何らかの事実をスクープされることを指して、「フライデーされる」と呼称されることもある。
FOCUS新潮社から創刊された写真週刊誌の草分け。有名人やタレントのスクープだけではなく政治的な事件や災害、事故などの記事も多い。また、従来の新聞やテレビなどが報道しなかった複雑な事件やニュースの裏側に迫る写真も数多く掲載した。

前田 でも担当者からすごい喜ばれるわけ。例えば「就職協定があるにも関わらず、どこどこの企業が九州大学法学部の学生にアプローチ開始!」みたいな。そんなのを学生から集めて編集してバンバン売りまくったんですよ。

ー めっちゃ売れそう!

前田 1年目に100社受注することになってね。それがきっかけで人事の口座が開くわけですよね。で、最終的になんとそれをリクルートが買ってくれるんですよ。そこからインテリジェンスのポジショニングができるんですよね。

ー いや本当、アイデアがいいですよね。

前田 それは鎌田さんのアイデアでした。当時リクルートとの関係性もあって新卒中心にやってたんだけど、リクルートとはいい関係を作りたかったので、リクルートがやらないことを全部やりますっていう形にしました。要するに媒体以外のことを全部やりますってことでリクルートの代理店をやらしてもらい、リクルートがあんまりやってなかったパンフレットとかホームページの制作とかいわゆる学生のデータベースや応募してくる学生に対してのBPRとかを受託してやってました。だから他の媒体会社がほとんど競合をやってない領域を、ガサっと取りに行ったんだよね。

見学メモ その7
BPRBusiness Process Re-engineeringの略。既存の組織や制度を抜本的に見直し、職務、業務フロー、管理機構、情報システムを業務本来の目的に向かってデザインしなおすこと。

ー 前田さんはその時どのポジションをやられていたんですか?

前田 僕は営業ですね。最初は僕と島田さんでやってて、徐々に営業の人間を中途採用でとっていきました。新卒は2年目から取り始めたのかな。

ー 2年目から?!はっや!

前田 採用には、インテリジェンスもすごい力を入れました。

「それまでの人々との付き合い方が起業の最初に出る」

ー 僕が面白いなと思ったのは、皆リクルート出身だったり関わりがあるのに、人材業をまず前提に起業してなかったことです。衝撃ですね。不動産業も視野に入れてたのが面白い。皆さんは起業の時からもうバイアウトとか上場を検討していたみたいなのはあったんですか?

前田 宇野さんはあったかもしれない。僕はIPOという単語は上場したあとで知ったもん(笑)

見学メモ その8
IPOInitial Public Offeringの略。「新規公開株式」または「新規公開株」「新規上場株式」と表すことも。未上場会社が、自社の株式を証券取引所で自由に売買できるように新たに証券取引所に株式を上場し、一般の投資家に向けて売り出すこと。
上場既に発行されている株式が公開市場で取引できるようになること。一般にはIPOと同じ意味合いで使われることが多いが、上場の場合は必ずしも新規の株式発行を伴う必要がない。

ー そうなんですか!(笑)

前田 宇野さんはもう起業する限りは、本気で自分のお父さんの会社を越えようと思ってたんじゃないかな。そういうのも勉強してたんだと思う。

ー 結局上場したのは起業してからどのくらいだったんですか?

前田 11年かな。でも早いわけじゃなかったと思います。サイバーエージェントとかは、起業から3〜4年で上場できたからね。インテリジェンスより早かった。

ー なるほど。そうすると、11年の中で人も増えていって前田さんの役割的には管理する側に付くことになると思うんですけど、さっきその総務の経験とか活きたみたいな話ししてたじゃないですか。

前田 総務はね、起業をしたばかりのなんの信用もない時に、リクルートの総務時代に付き合っていただいていた協力会社さんがなんの縁もないのに、最初のオフィスのレイアウトをやってくれたりとか、コピー機をリースで提供してくれたりとか。

ー やっぱり人情商売って言ったらあれですけど、前田さんの人生の構成のメインが人と人の繋がりですね。

前田 それはね、経験したよね。結果的にそういうことに繋がるんだなって。だから後輩などが起業するときに言うんだけど、もちろんやりたいことも大事だし、その会社の登記とかハード面もそうだけど、どういう人たちに助けてもらえるかとかどういう人たちの役に立つかとか、それまでの付き合い方が起業の最初に出るよっていう話はよくするんだよね。

加工・製造編

社内の人間関係を科学するために見出した共通言語

ー 前田さんはその後インテリジェンスから離れたと伺っていますが、IPO後すぐに離れたんですか?

前田 もうね体調壊しちゃったんですよ。

ー 働きすぎ?

前田 そうそう。辞めるちょっと前からね。もう新規事業ばっかりやってたんだけど、それを大きくできなくて。だから次から次に大きくできそうなやつにバトンタッチするわけ。「どうして大きくできないんだろう」って。そういうのが僕の中で凄いストレスだったんだよね。だけど、FFS理論と出会ってそれが変わった。「あ、そうか!僕は苦手なことやらなくていいんだ」って思ってからは、自分を解放することができたんだよね。

見学メモ その9
FFS理論Five Factors & Stressの略。 生理学、ストレス学を基礎に個々のストレッサーを特定することで5因子に分類し、ストレスに対する生体反応を数字化。組織の生産性を上げるためにストレス学をベースに研究された「人の思考行動の特性を客観的に分析する」理論。
https://www.youtube.com/watch?v=r55Xp7e79cI

ー FFSっていうワードがここで出てくるんですね。前田さんの今の事業に直接繋がってくると思うんですが、FFS自体に出会ったのはインテリジェンスにいた時だったってことですか?

前田 全社導入してるんですよ。従業員数150人くらいかな。

ー そのFFSを導入したきっかけってなんだったんでしょうか。

前田 僕はたまたま人材派遣と人材紹介をやったあとに人事を経験したんだけど。人事って攻めと守りのふた通りあるんだよね。守りの仕事が7〜8割で、残りの2割は攻め。要するに採用とか後は組織人事戦略とか。でもね、僕は守りが圧倒的に苦手でそこでもストレスだったんですよね。会社に行きたくない時もあって。なかなか新しく採用したマネージャーが定着しない、成長しないという苦しさとかもあって。

そこで事業をまたいだ事業部長同士が同じ言語で話できないとダメだってなって。ここでずっと人材サービスをやってきた知見が活きて、これマッチングサービスと同じだなって思いました。マッチングサービスの原料を考えた時に、マッチングの初動とそのクオリティを上げるための共通言語が欲しかった。それで従業員向けのサーベイを探したのがキッカケです。SPIとかも詳しく調べたけど、FFSに出会った。

見学メモ その10
組織人事戦略採用や人材の育成・配置など、人事全般に関わる業務やオペレーションを改善し、組織の生産性を高め長期的なビジネス目標を達成するための戦略的アプローチ。
サーベイ物事の全体像や現状を把握するために広範囲で行う調査のことを指す。特に社内サーベイの場合、従業員や組織の意見・ニーズを把握し、企業内の課題の明確化や改善につなげることが目的とされている。また、人事制度や就業規則の改定をはじめ様々な人事施策・人事戦略に活かすための調査。
SPISynthetic Personality Inventoryの略。リクルートマネジメントソリューションズ社が開発した適性検査で、性格と能力を測定する。

ー なるほど。所謂社会人で、ある程度価値観が形成されたあとの思考能力とかそういうのを計るのもはあったけど、潜在的な人間特性をデータ分析できるのはFFSだけだったと。

前田 あとチーム編成もね。FFSってチームの個性も全部測れるんです。他のものだと個人向けしかなかったから。チームの個性が測れると派遣スタッフと派遣先の担当者を想像したりとか、あとメンバ—配属するときに部長とマネージャーとメンバーの関係性とかを数字で見れる。それが魅力だったんだよね。

ー それでいうと前田さんはFFSを絡めた事業をやりたいっていう前提で、今のワークスエンターテイメントを始めたんですか?

前田 それは関係なかった(笑)インテリジェンスの中では上場も視野に入ってきていたから、創業メンバーが辞めるっていうのはその企業価値に影響が出るわけですよ。それですぐ辞めるのは無理だから、まずは本部の人事で仕事をしてもらって、体調を治しながら子会社の副社長に転籍するという道を宇野さんが用意してくれたんです。結局、半年間くらいはそこにいさせてもらって、その後はフリーになりました。

ー 半年全うされて一旦離れて新しい道という感じ。

前田 そうそう。35歳くらいの時かな。そこから5年間は色々な会社の顧問をやらせてもらったり、ゴルフとか温泉巡りしてました(笑)

ー リフレッシュですね(笑)

前田 でも半年くらいで飽きちゃってさ(笑)それで2003年くらいかな。高校のサッカー部の先輩が会計事務所を日本橋でやっていて、ちょうどインキュベーションやるからちょっと手伝ってって言われて、出入りし始めたタイミングで後にワークスエンターテイメントの代表取締役社長に就任する瀧田君がインテリジェンスを辞めるんですよ。

それで「前田さん一緒に何かやりましょうよ」っていきなり来て。ちょうどスペースも空いていたから何か一緒にやるかみたいな感じで日本橋の事務所を借りて、FFS事業をやり始めました。その時はもう、出来ることはFFSしかないみたいな感じで。でもその時は、FFSのキャリアに関するスキームは大失敗することになるんですが。

見学メモ その11
インキュベーション起業および事業の創出をサポートするサービスや活動を意味する。ビジネスインキュベーション(BI)とも呼ばれている。
スキーム「計画」「案」のこと。ビジネスで用いる場合、「計画」のほかにも「枠組み」というニュアンスが含まれる。

ー 大失敗するんですか!

前田 しかも売れないのに資料とかパンフレットとかいっぱい作っちゃって、かなりの資金を失っちゃうんです(笑)だけどその後にもう一回、ワークスエンターテイメントの前身になる会社を作ることになります。

出荷・提供編

自分が「できなかった」ことで苦しんだからこそ分かる自己理解、他者理解、相互理解の重要性

ー そこから本格的にワークスエンターテイメントが形になり始めたと。出来ることはFFSしかないっておっしゃっていたので、FFS理論を軸にしてるのはもちろんだと思うのですが、今のワークスエンターテイメントの事業をお伺いしてもいいですか?

前田 『ワークスエンターテイメント』は主に「コストの適正化」と「組織の適正化」の2軸でサービスを展開しています。どちらも経営力改善を目的にしていて、FFS理論はその「組織の適正化」の方で使ってますね。

「コストの適正化」は、やっぱり経営をやるに当たってここは意図的に取り組んでいかないといけないところなんですよね。営業利益増だったりキャッシュアウトのコントロールに直接繋がるので。でもそれに関しての専門的な知識が無いと細かくやるのって難くて。

例えば、固定資産税とか賃料とか間接費とか、そういう専門的な知識が必要になるものを、それぞれの項目ごとの専門家の知見を踏まえて提供するよっていうのをやってます。

ー なるほど。「組織の適正化」についてはいかがでしょうか?

前田 「組織の適正化」は、FFS理論を提唱する株式会社ヒューマンロジック研究所とパートナーシップを締結して、FFS理論の社内導入支援と個人キャリアの支援がメインです。FFS理論を導入して実施するところから、結局FFSをやってもどうやってそれを人事に落としていくかだったり、ビジネスに活用していくのかが分からないわけ。だからその部分までサポートしていく。組織を改善していくための打ち手・実践戦略を、FFS理論から得たデータを基に提供していきます。個人キャリアの支援も、FFS理論から得たデータを通してその人のキャリアを模索していきます。

ー どちらのサービスもそうですけど、根底に環境の最適化がありますよね。組織としていかに前進していくかっていうために潜在的なものを顕在化させていく。一貫してそんな印象を受けます。

前田 やっぱり自分が「できなかった」ことで苦しんできたんだよね。役職っていうのは役割でしか無いから、役割を全うできなかったら代わればいい。それがFFSを知ることで、自分も楽になったんですよね。

自己理解、他者理解、相互理解ってよく言うじゃないですか。組織の活性化とか個人のキャリアを支援する今の仕事をして、FFSから学んだ一番の原理原則は、自己理解、他者理解、相互理解。これが人間関係を化学することになる。まあ心理的な安全性っていうのはそういうことだよね。

ー ワークスエンターテインメントの説明するときは、FFS理論を活用した組織の活性化とかストレスマネジメントの研修とかも含めて、組織っていうものを成長させるきっかけ作りをしてるって言っていいんですね。

前田 そうですね。組織と個人とね。最近でいうと創業の理念に「それぞれがそれぞれに合った環境の創造を」っていう、これ瀧田君が作ってくれた言葉なんですけど。それが今でも脈々と流れていて。

何のためにワークスエンターテインメントは存在し続けるの?って話し合った時に「それぞれがそれぞれに合った最適な環境の創造」っていうのを全事業にくっつけていこうってなって。元々の創業理念とかビジョンを立ち上げてリンクさせているっていう感じなので、これからのワークスエンターテインメントのパーパスはこの想いを市場に伝えていくことですね。

ー なるほど。じゃあもう対象は個人向けと法人向けで。サービスとしては分けることもできるし、複合的にクライアントさんにコンサルするみたいなこともできるって感じですかね。

前田 そうそう。だからビジネスモデルとして現時点ではBtoB、BtoBtoCになるよね。今度はそれを切り離して今BtoCもやり始めてるんですよ。トライアルで去年くらいから。それも今年強化していこうと思っていて。キャリアを整えていくっていうFFSを使ったサービスをこれからローンチしていこうと準備してるって感じ。

残りの人生、少しでも長く。
それぞれに合った働き方に貢献できるようなサービスを提供してその機会をいっぱい作っていきたい

ー FFSを使って今後こうなっていったらいいなとかありますか?会社としてこういう方針でみたいな。

前田 やっぱり人材サービス・組織人事の業界で仕事をしていて、やっぱり多様性のある個が輝ける世界にするためにはどうすればいいだろうっていうのが、これからすごく問われていくと思うんですよね。

ー うんうん。

前田 それでそれぞれに合った働き方に貢献できるようなサービスを提供して、その機会をいっぱい作っていけたらなと思うんですよね。

ー 前田さんの人生をお伺いしていけばいくほど、図らずして人材業界をずっと来てますけど、人との繋がりとか人との関係とかがやっぱり前田さんの中で大きなテーマになっているように感じます。

前田 そうですね。自分の中で「誰とやるか」「誰かの役にたつか」っていうことは凄い大事なキーワード。起業の時もそうだけど、これまでの3回の起業は別に自分がやりたかったわけじゃないんだよね。誰かのためにっていうのが、押しつけがましいのは嫌なんだけど。「裏っかわでちょっと役に立ってるぜ」みたいな感覚が自分の中での人生の軸なんだろうなって思う。

ー それって凄く素敵ですよね。起業自体もそうですけど今のサービスの中身にもそれが表れている気がします。

前田 自分のためじゃ頑張れないですよ、怠け者だし(笑)でもやっぱり朝早くから起きて頑張るのは家族のためとか、会社に来てるメンバーのためとか、そう思うと脳がワクワクするわけですよ。パワーが出るわけですよ。自分が何か成し遂げたい、大物になりたい、歴史に名を残したいとか全然思わない。それよりも、関わる誰かと何かを共有するとかさ、最高だよね。

だからそのさっきも言った、それぞれに合った働き方に貢献できるようなサービスを提供してその機会をいっぱい作っていけたらっていうのは、自分自身のミッションとしても思っています。

ー 前田さん自身の。

前田 はい。個人のミッションとしても消化して、ワークスエンターテイメントもそうだし、自身もそこにコミットした人生の第4コーナーを過ごせたら凄くハッピーかなと思ってますので。

そこにちょっと、残りの人生。少しでも長く。頑張ってまいりたいなと思ってるんです。

今日はこのような機会をいただいて、改めて御礼申し上げます(笑)

ー こちらこそです!前田さん、本当にありがとうございました!


今回のビジネス工場見学は楽しかったですか?
前田氏から出荷されたサービスは下記から確認してみてくださいね!

『株式会社ワークスエンターテイメント』HP https://works-enter.co.jp/

さて、次は誰の工場を見学しよう。

企画構成・インタビュアー いそっち

事業戦略策定、戦略に基づく戦術(マーケティング、コンセプト、コンテンツ)の企画を生業としている。 以前はアドテク業界でトレーダー、HR業界でアナリストを務める。座右の銘は「1%くらいが好きになってくれれば良い」。好きな食べ物TOP3はいちご大福、柿の種チョコ、サーティーワンのポッピングシャワー。Twitterアカウント「ふたむら、曰く@observefutamura(https://twitter.com/observefutamura)」の運用者。お仕事のご相談はお気軽にDMまで!

文章・写真 泡沫コト

7歳の頃から小説を書くことに魅了され、2018年からフリーランスライターとして活動開始。現在はwebライティングをはじめWebサイトや広告などのコピーライティングや、ゲームやイベント、映像関係などのシナリオ・脚本制作を行なっている。また、小説や詩、エッセイや写真などの表現活動を通して物語やコンセプトの創作にも取り組んでいる。好きなものは珈琲、散歩、温泉、アート、エンタメ全般。これからゲーム配信に挑戦しようとしている。

インタビュー実施場所

Studio HEYA(スタジオ・ヘヤ)

東京・西日暮里にあるキッチン併設のハウススタジオ。
朝も夕も自然光が差し込む2階の南西向きに位置しており、木とアイアンとヴィンテージ家具がバランスよく調和する空間です。
ファッションポートレートや商品撮影、キッチンシーンを取り入れたライフスタイルカット、自然光を活かしたレシピカットなど、さまざまなシーンの撮影に適応できます。

スタジオの詳細が知りたい方はこちらから!(https://heya.lamm.tokyo/

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