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インディペンデンス・デザイン® / 全11回の目次 10 / 11

プロジェクトを完遂させる「実行力」と「管理」

  • THINKING

DATE . 2026/10/21

インディペンデンス・デザイン®の表紙と見開き紙面

Ⅳ|Logos 論理と実行 / 第9章

受注はゴールではない。「カオス」への入り口だ

契約書にハンコをもらい、着手金が入金された瞬間。「やった、決まった!」と祝杯をあげたくなる気持ちはわかります。しかし、プロデューサー視点において、ここはゴールではありません。むしろ、予測不能なトラブルが待ち受ける「荒海(カオス)」への出航です。

多くのプロジェクトが失敗する原因は、実行フェーズの「マネジメント不足」にあります。「あとはプロの職人(デザイナーやエンジニア)に任せておけば大丈夫だろう」という放任主義や、「決めたスケジュール通りにやってください」と鞭を打つだけの管理主義では、プロジェクトは必ず沈没します。

プロジェクトマネジメント(PM)とは、Excelでガントチャートを引くことではありません。生き物のように変化する状況の中で、常に「目的(Why)」を見失わず、ゴールまでの最適ルートを修正し続ける「操舵(ハンドルさばき)」のことです。

すべては初日の「オリエンテーション(憲法制定)」で決まる

私の実感では、成否の8割は、初日の「オリエンテーション(キックオフ)」で決まります。ここで単なる「顔合わせ」や「要件の確認」だけで終わらせてはいけません。

オリエンとは、そのプロジェクトにおける「憲法」を制定する場です。

特に重要なのは、クライアントにも「お客様」ではなく「プロジェクトメンバーの一員」としての役割を渡すことです。「素材が遅れたら納期も遅れます」「確認に3日以上かかると品質が落ちます」という「相互依存(Interdependence)」の関係を最初に握っておくこと。これが、後々のトラブルを防ぐ防波堤になります。目的の共有(Why)01「何を作るか」ではなく、「なぜやるのか」「成功とはどういう状態か(Vision)」を、クライアント・メンバー全員で腹落ちするまで語り合う。

役割の定義(Role)02「誰がボールを持つのか」。バリューチェーン(工程)の中で、誰がどこに責任を持つかを明確にする。

・「私は進行管理と品質担保をやります」・「あなたはクリエイティブのジャンプ(飛躍)を 担当してください」・「クライアント様は、社内調整と素材提供の 責任を持ってください」

03 カルチャーの合意(Basis)「心理的安全性」の確保。「悪い報告ほど早くする」「互いにリスペクトする」といった、チームの行動指針(Basis)を宣言する。

進行管理は「カーナビ」と同じである

スケジュール表を作って、「はい、この通りにお願いします」と渡して終わり。これは三流の仕事です。現実は計画通りにいきません。誰かが風邪を引くし、急な仕様変更が入るし、予期せぬバグが出ます。

プロデューサー視点の進行管理は、「カーナビ」と同じです。目的地(ゴール)は動きませんが、ルートは状況に応じて柔軟に変えなければなりません。「事故渋滞(トラブル)が発生しました。ルートを再検索します」と、即座に別ルート(代替案)を提示するのがPMの仕事です。

デザインで難航したので、開発期間が短くなりました。代わりに機能を一部カットして(梅プランにして)、納期を守りましょうか?

どうしても機能を残すなら、納期を2週間延ばして(ルート変更して)、追加予算をもらいましょうか?

計画(Plan)を守ることよりも、目的(Goal)に到達することのほうが重要です。「スケジュール通りにいかない」と嘆くのではなく、「じゃあどうするか」と常にチューニングし続ける。その柔軟性(Resilience)こそが、プロジェクトを完遂させる力です。

トラブル対応こそ、信頼獲得の最大のチャンス

仕事をしている以上、トラブルからは逃げられません。しかし、「Basis 02:逃げない」でも触れたように、トラブル対応こそがプロの腕の見せ所であり、実は信頼獲得の最大のチャンスでもあります。

平時のやり取りでは、相手の本性は見えません。しかし、ミスをした時、窮地に陥った時に、どう振る舞うか。そこで人間の器(Ethos)が試されます。

やってはいけないのは、「隠すこと(ごまかすこと)」と「他人のせいにすること」です。「実はデザイナーが飛んでしまって…」と言い訳をするPMを、誰も信用しません。

トラブルが起きたら、「バッドニュース・ファースト(悪い知らせほど早く)」を徹底してください。そして、ただ謝るだけでなく、必ず「再定義(リカバリープラン)」を持っていくのです。申し訳ありません。予期せぬトラブルで、当初のプランAは実行不可能になりました。しかし、すぐにプランB(代替案)を用意しました。これなら目的は達成できます。これで進めますか?

トラブルから逃げず、正面から受け止め、代案を出して前に進める。この姿を見た時、クライアントは「この人は何があってもゴールまで連れて行ってくれる」と確信し、トラブル前よりも深い信頼(絆)が生まれます。雨降って地固まる。これを意図的に起こせるのが、真のプロデューサーです。

完了は終わりではない。次なる「成長」への種まき(農耕型ビジネスへ)

無事に納品し、検収印をもらった。「ああ、終わった!」ここでプロジェクトを「完結」させてしまう人は、もったいないことをしています。

プロデューサー視点において、プロジェクト完了は「次のサイクルの始まり」です。

一度築いた「価値観の合う関係(ポジショニング)」は、あなたの資産です。単発の狩猟型ではなく、畑を耕し続ける農耕型のビジネスへ。一つのプロジェクトの終わりを、次の信頼の種まきに変えることができれば、あなたは営業をしなくても、仕事が途切れることはなくなります。振り返り(Review)01チームで「KPT(Keep/Problem/Try)」などを行い、良かった点と反省点を洗い出す。この「経験知」を言語化し、自分のOS(Growth)をアップデートする。

フィードバックの収集02クライアントに「ぶっちゃけ、どうでしたか?」と聞く。「実はあの時の対応が不安だった」といった本音(耳の痛い話)こそが、次の改善のヒントになる。

03関係性の維持(Resilience)「納品してさようなら」ではなく、その後も定期的に連絡を取り、効果測定を行う。「作って終わり」ではなく「成果が出るまで見守る」姿勢が、次の指名発注(リピート)を生む。

第9章の書籍見開き
書籍の紙面より。

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