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インディペンデンス・デザイン® / 全11回の目次 7 / 11

利他的な「わがまま」が、最強のチームを作る

  • THINKING

DATE . 2026/10/21

インディペンデンス・デザイン®の表紙と見開き紙面

Ⅲ|Pathos 共感と戦略 / 第6章

「自分勝手」と「自分軸」は紙一重

「自分の人生を生きる」「自分軸を持つ」と言うと、決まってこう反論されます。「そんな『わがまま』な生き方をしていたら、周りから人がいなくなるんじゃないですか?」

半分正解で、半分間違いです。確かに、ただ自分の欲望だけを押し通す「自己中心的(Egoistic)」な人間からは、人は離れていきます。しかし、「自分の軸(Philosophy)」を貫きながら、その結果として「他者に貢献(Altruistic)」しようとする人間の周りには、最強のチームが生まれます。

私はこれを「利他的な『わがまま』」と呼んでいます。

プロデューサー視点において、「自分(I)」と「相手(You)」は対立しません。「私が最高だと思うもの(I)」を提供することで、「あなたが最高の結果を得る(You)」という構造を作るからです。自分の美学やこだわり(わがまま)を突き詰めることが、巡り巡って相手のためになる。この循環を作れる人が、真のプロフェッショナルです。

逆に、自分の軸を持たず、相手の顔色ばかり窺っている「利己的なイエスマン(嫌われたくないだけの人)」は、いざトラブルが起きた時に保身に走り、結果として相手を裏切ります。

Basis:プロフェッショナルとして信頼される「10の基本」

では、独りよがりな「わがまま」にならず、信頼される「個」であるためにはどうすればいいか。そのための行動指針が、第3 章のSurvival Principlesを支える「Basis(10の基本)」です。

これは私が経営する会社で定めているものですが、どんな職種、どんな立場の人にも通じる普遍的な「プロの作法」です。

これらは、誰かに強制されるルール(規則)ではありません。あなたがサバイバルするために、自分自身を守るための鎧(Basis)です。「逃げない」と決めているから、信用が貯まる。「意固地にならない」と決めているから、成長が止まらない。この基本動作ができている人間は、どんなに尖った「わがまま(専門性)」を持っていても、愛され、信頼されます。

  1. 接客重視
  2. 逃げない
  3. バイブス重視
  4. 関わる人が満足
  5. 提案する
  6. 笑う
  7. 意固地にならない
  8. 境界をつくらない
  9. 認める
  10. 受け容れる

「気遣い」とは、迎合ではなく「目的達成」への最短ルート

「Basis 01:接客重視」にもあるように、私はビジネスにおいて「気遣い」を非常に重要視しています。しかし、ここにも大きな誤解があります。多くの人が考える気遣いとは、「相手の機嫌を損ねないこと」や「相手が言った通りにすること」です。それは気遣いではなく、ただの「迎合(媚び)」です。

プロデューサー視点における「気遣い」とは、「ゴールにたどり着くための障害を、先回りして取り除くこと」です。

例えば、登山ガイドを想像してください。客が「疲れたからここで寝たい」と言った時、「いいですよ、どうぞ」と寝かせて凍死させるのが「迎合」です。「ここで寝ると死にます。あと少し頑張れば山小屋があるので、そこまで行きましょう」と励まし、荷物を持ってやり、手を引いて連れて行くのが「気遣い」です。

ビジネスも同じです。クライアントが間違った判断(ここで寝たい)をしようとした時、それを止めること。相手が気づいていないリスク(凍死)を、先回りして伝えること。たとえその場では「うるさいな」と思われても、最終的にゴール(登頂)に導くこと。

これが、「戦略的な気遣い」です。相手に好かれるためにやるのではありません。プロジェクトを成功させるためにやるのです。その結果として、「あの時、止めてくれてありがとう」という深い信頼が生まれます。

本当の利他とは、相手のために「言いづらいこと」を言う技術

第3章で「サバイバルには仲間が必要だ」と言いました。仲間とは、傷を舐め合う関係ではありません。お互いの目的達成のために、耳の痛いことも言い合える関係です。「そのデザイン、目的からズレていませんか?」「その予算では、期待する成果は出せません」「今のあなたの態度は、チームの士気を下げています」

こういう「言いづらいこと」を言うには、勇気が要ります。嫌われるかもしれないからです。しかし、そこで黙っているのは、自分を守るための「利己的な沈黙」です。相手の成功を本気で願うなら(Pathos)、リスクを取ってでも伝えなければなりません。これが「利他的な指摘」です。

ただし、伝え方には技術が必要です。ただ感情的に「ダメだ」と否定するのは三流です。「私たちの目的(Goal)は〇〇ですよね。それを達成するためには、今の△△は障害になります。だから、□□に変えませんか?」

常に「共通の目的」を主語にするのです。そうすれば、対立構造(私vsあなた)ではなく、共闘構造(私たちvs課題)になります。「言いづらいことを言う」ことこそが、最大の愛情表現であり、最強のチームビルディングなのです。

自分の軸があるからこそ、他者をリスペクトできる

最後に、「Basis 09:認める」「Basis 10:受け容れる」について。

自分の軸(Foundation)がない人は、他者を認めることができません。自分に自信がないから、他人の成功を妬んだり、自分と違う意見を「攻撃」とみなして排除しようとします。

逆に、しっかりと自分の旗を立てている人は、他者に対しても寛容になれます。「私はこの旗(価値観)を掲げている。あなたは、その旗を掲げているんだね。どっちもいいね」という、「相互のリスペクト(Mutual Respect)」が生まれるからです。インディペンデンス・デザイン®のゴールは、孤立することではありません。自立した個人(Independent)同士が、お互いの「違い」を面白がりながら、目的のために一時的に手を組む(Interdependent:相互依存)。これこそが、これからの時代に求められる、流動的でしなやかなチームのあり方です。「誰かの下請け」として使われるのではなく、「一人のプロフェッショナル」として、リスペクトし合える仲間と出会うために。まずはあなたが、自分自身に対して「プロである」という誇りと、少しの「わがまま」を持ってください。

第6章の書籍見開き
書籍の紙面より。

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